クリスマス
まぶたを閉じれば今も鮮やかに映し出されるその日の光景。
寒がりな私の右手を、夫は自分のジャケットのポケットに誘導した。
滑り込ませた私の右手は、そのポケットに先客が居ることに気が付いたのだ。
『幸一さん、何か入れているの?』
『うん、実はね……』
そう言って私の右手に、その先客を握らせた。
取り出した私の手元にはあの白い箱があった。
『晴美ちゃんに』
『くれるの?』
箱を開けた私は言葉を失った。
涙がにじんだ目で夫を見上げると、夫は柔らかく笑っていた。