拾った男,まさかの一生もん
「別に」

「……そんだけ?」



あずさは気の抜けた顔を俺に向ける。

そもそも。



「俺は特に人に恋愛感情なんて持ったことねぇし。女を好きになったこともねぇのに,男を好きな男に何か言う筋合いなんざねぇんだよ」

「あ…そ。その気持ちを自分に向けられたらとか,思わないわけ」

「別に。他人の気持ちはそいつのもんで,俺には関係ねぇ」

「じゃあ」



あずさがずいっと寄ってくる。

俺は麦茶を飲んでいたコップをちゃぶ台に置いて,あずさの次の動きを目で追った。



「俺を拾った責任…惚れられた責任,とってくれる?」



抵抗もしなかった俺の体は,いとも簡単に押し倒されて。

目の前には綺麗な顔面だけが映った。
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