拾った男,まさかの一生もん
「お前,帰りたくねぇの?」



そんな踏み込んだことを聞いたのは,何日目のことか。



「なに,邪魔?」

「いや,別に」



正直あずさがいるくらい,もう慣れた。

今さらいなくなられても,物足んねぇような気すらする。



「……両親の仲がわりぃんだよ,最近。その火の粉から身を守ってんの」

「へぇ」



そんだけ? って抗議の視線が飛ばされた。

自分で聞いといてだが,あずさの事情に,特になんの興味もない。



「俺,ちょーエリートの間に生まれたわけ」

「へー」



そうは見えないな。



「今意外だと思ったでしょ。ま,実際そーなの。俺勉強なんてだいっきらいで,糞食らえなの」



それで元々反感食らってたんだけど…



あずさは思い出すように瞳を閉じる。

何となく緊張した雰囲気を感じて,別に話さなくていいのにと俺は思った。



「俺,よりにもよって男を好きになっちゃって。両親大爆発みたいな。で,今は俺みたいなのになった責任を擦り付け合ってる」



その内全部お前のせいって俺に矛先向くんだろうなー。なんて,あずさは言いながら,俺をチラリと一瞥した。



「引いた?」




< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop