太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
昨夜、諒が会いに来てくれたことで不安がほぼなくなったせいか、スッキリと目覚める事ができた。

ふふっ、好きな人に愛されてる事を実感するのって、すごいパワーなんだね。

えーと、お母さんの会社に11時だから…
と、逆算して新幹線の時刻を決める。
平日だし指定席取らなくても座れそうだね。

よし!じゃあ行きますか!



ホームに到着した新幹線の自由席に乗り込み、空いていた2人掛けの座席の窓側に座る。
そして諒にいってきますのメールをすると、すぐに返信が来た。

『いってらっしゃい!事故にも男にも気をつけてね。愛してる!』

ふふっ、男に気をつけてって。
そんな心配はいらないのにね。



『……まもなく終点、東京です。お降りの際はお忘れ物等ございませんよう……』

ん…もう到着…?

車内アナウンスで目が覚めた。
いつの間にか寝ちゃってたみたい…
ペットボトルのお茶をコクリ、コクリと飲んで意識を覚ます。


改札を出て、乗り換える地下鉄のホームへ向かう。

いつ来ても東京は人が多いなぁ…なんて田舎者の発想を巡らせながら地下鉄を乗り継ぎ、お母さんの会社に辿り着いた。

入口のガラスの扉を押し、足を踏み入れるとチャイムが鳴る。
受付らしきところへ向かうと一人の女性が隣の部屋から出てきた。

「すみません、羽倉の娘の羽倉麻依と申しますが母は…」

「あっ、社長の娘さんの麻依さんですよねッ!お待ちしておりましたぁ!あぁ、とってもお綺麗で社長に似てらっしゃいますね!どうぞこちらですぅ」

ひよりんをパワーアップしたような女性が案内してくれたのだが、何となく見た目もひよりんぽくてクスリと笑ってしまった。

階段を上がりきると、奥に見えたドアをコンコンとノックした。

「社長、麻依さんがお見えですぅ」

すると中から「どうぞー」と母の声がした。

「失礼しまぁす」とひよりん似の彼女がドアを開けて「どうぞぉ」と私を中へと促した。

「麻依、いらっしゃい。わざわざ悪かったわねー。さ、掛けてちょうだい」

「お母さん、忙しいのにごめんね」

「いいのよー、こっちこそ来てもらってるんだから」


「それでは失礼しまぁす」

「松下さん、ありがとう」

「ハイッ」

松下さんていうんだ。
下の名前も気になるなぁ、ふふっ。


「それで、お父さんのことだけど…」

「まぁ何か飲みながら話しましょ」


コンコン

「社長、コーヒーをお持ちしました」

「あぁ戸田くん、ありがとう」

戸田くんと呼ばれた男性が、テーブルにコーヒーを置いてくれた。

「戸田くん、私の娘の麻依よ」

「はじめまして。羽倉麻依です。母がお世話になっております」

「あなたが麻依さん…お名前は伺ってましたが…いや本当にお綺麗で…お会いできて光栄です。それにしても本当に社長によく似ていらっしゃる」

「ふふっ、はい、よく言われます」

「麻依、彼は戸田くん。うちの優秀なデザイナーで私の秘書の様なお仕事もしてくれてるの」

「戸田 佑樹(とだ ゆうき)といいます。社長にはお世話になってます。本当に素敵なお嬢さんですね、社長」

「あら、随分と褒めてくれるのね。でも麻依にはもう素敵な彼がいるのよね」

「そうでしたか!…まぁこんなに素敵なんですから、いない方がおかしいくらいですけどね。でも残念だな、フッ」

…東京の人はお世辞が上手いなぁ…
あ、東京の人だから、というか、戸田さんだからなのかもしれないけど。

「では僕はこれで失礼します」

「戸田くん、ありがとね」

私もペコリと一礼した。
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