太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「!」

カップがカチャン!と音を立ててソーサーに置かれた。

その反応…ってことはやはり……


「ねぇ、佐々木くん言ってたよね?アタシが諒クンと別れた後に、アタシがモデルで成功したら迎えに行くって、諒クンがそう言ってたんだよね!?…そうだって言ってよ!佐々木くん!…ねぇ、諒クンが言ったんだよね!?」


やはり佐々木さんが言ったのか…

佐々木さんにすがって懇願する所を見ると、月乃さんも自信がないのかもしれない。


「俺はそんな事、絶対に言ってません」

「嘘よ!諒クンがアタシを迎えに来てくれるの!」

すがる月乃さんに、佐々木さんは苦しそうに答えた。

「靖子……違うんだ……」

「…佐々木くん?」

「その言葉は…僕だ……僕が言った言葉だ」

「嘘……諒クンじゃないの…?」

「あぁ……」

「じゃあ…最初からアタシを騙してたの!?」

「違う!違うんだ!聞いてくれ!……確かにそれを言ったのは僕だ。……靖子が佐伯と別れたって聞いてから…君がモデルって職業に憧れていた事を思い出して…」

「………」

「靖子、ずっと新しい世界に出るのを怖がってただろう?だからあの時…これを機にやってみたらいいのに…と思って……ダメだったとしても僕がついてるから、モデルの世界で精一杯頑張ってこいって意味で…言ったんだ」

「……うそよ……」


「…僕は昔から靖子がずっと好きで……君の役に立ちたくて…同級生として付き合ってきた。…靖子が佐伯に一目惚れしたのも知ってた。…だから…佐伯の気がないのを知っておきながら…無理やりお前の彼氏にさせた……佐伯を通じていればまだ繋がりを持てると思って…」


「はぁ…やはりそうでしたか…」


「でもあの言葉は騙すつもりなんて全くなくて…佐伯と別れた靖子に、僕の気持ちをぶつけたつもりだった。…でも…最近になって気付いたんだよ。靖子が佐伯の名前を出すようになって、僕の言葉を佐伯が言ったものと思い込んでるって事に……しかも少し言葉も変わっていて…」

「え……」

「僕は…『成功してもしなくても、僕は待ってる』そう言ったんだ……だから僕も苦しかったよ……靖子が悲しむと思うと本当の事が言い出せなくて…」


「そんな……最初から全部アタシの思い違い…だっ…た……」

ぼろぼろと涙を流す月乃さんが少しかわいそうにも見えたが、まぁ俺には関係のない話でどうしようもないもんな。



はぁ……

やっとこの件の終着点が見えて、安堵のため息が自然と出た。

今回の事は麻依には本当にストレスをかけたよな…ごめんな……と横から抱き締めながら麻依を見ると、麻依もぼろぼろと涙を流してた。

「まっ麻依?どうした!?どこか痛いのか!?」

俺が慌てふためくと、麻依が「ううん…身体は大丈夫」と俺にもたれ掛かると、胸に顔をうずめた。

そっとその小さな身体をもう一度優しく抱き締める。

「ごめんね、月乃さんの気持ちを考えたら…胸が痛くて…」

「麻依……」
抱き締めながら麻依の頭を撫でていると、麻依の向こうには千紗さんが涙を堪えているのが見えた。


…片想いと思い違い、か……切ないな…

まぁ元はと言えば、佐々木さんが俺を駒の様に扱ったのが悪いんだけど。
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