太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
それからしばらくすると麻依さんが目を覚まし、既に起きていた俺を心配そうに見る。

「…具合はどう?まだ寝てた方がいいんじゃない?」

あぁ…敬語じゃないのが嬉しい。

「いえ、もう大丈夫かと」

自分ではもう平気だと思って立とうとしたがふらついてしまい、それを見た麻依さんに「ほら!…まだ寝てないとだね」と笑顔で言われてしまった。
そして「ちょっと支度してくるね」と台所へ向かう。

フゥと息を吐き、大人しく言うことを聞いてまた横になった。

大事にされるって、こんな嬉しかったっけ…
長い一人暮らしですっかり忘れていたな…
と安堵の気持ちに浸っていたところ、ふと自分の着ているスウェットに気づいた。

これ…俺が着てちょうどいいってことは、麻依さんのじゃないよな。
メンズものだよな。

…え?じゃあ誰の…?

心の中がモヤモヤする。

彼氏はいないって言ってたよな…
じゃあ元彼の?
…まだ忘れられずに持ってる…とか?


ドクン

つか、なんだこれ…
やたら嫌な動悸が…

聞きたくないけど聞かずにモヤモヤするのもイヤだしな…と意を決して聞くことにした。
…こんなことを聞くのに〝意を決する〞とか、どんだけチキンなんだ俺は…


そして部屋に戻ってきた麻依さんに聞いてみた。

「お俺が着てるこれって、彼氏さんのですか?」
…噛んだ。

俺の質問に最初はキョトンとしていたが、すぐに笑顔になり「違いますよ」と答えてくれた。

「男の人が住んでいるように見せるためのダミーで、たまにそれを外から見える所に干すんです。…彼氏なんてもう何年もいませんからね。そうそう、それに袖を通したのは支配人が初めてですよ」
あっ、ちゃんと洗ってありますからきれいですよ、と笑って付け足す。

聞けば、このスウェットは麻依さんがここで一人暮らしを始める時に、大学時代の女友達が心配してくれたものだという。
どうせなら背の高い彼氏に見せかけないと!という謎理由で大きいサイズを買ったらしい。

「それにね、」と続けて話してくれたのが面白かった。

スウェットの理由と同様に、男(不審者)避けのためにと、CDショップの店員をしている友達からは男性演歌歌手の等身大パネル(まさかのサイン入り!)を、また別の友達からは野球選手がバットを構えている姿の等身大パネルを貰ったのはいいが、これをどうしたらよいか分からず押入れに立て掛けてあるという。

「…窓際にバットを構えた大きな人が見えたら…まずいですよね」
「…そうですね…」

「…窓際に金ピカ衣装の人がいたら逆に目立ちますよね…」
「…そうですね…」

「あっ、見ます?」
「…いや…いいです…」

「あっ、いります?」
「…いや…いいです…」

「一つはサイン入りですけど」
「…いや…いいです…」

「ですよね…」
ふぅ、と息を吐く麻依さん。

あとから窓際の等身大パネルを想像したら吹き出しそうになった。

ヤバい。コレ、じわるんだけど…ククッ

でも…そっか、誰のでもなくてよかった。

「まだ時間も早いので、もう少し休んでてください。私、今日は出勤なので、これからちょっとシャワーしてきます。傍についていなくても…もう大丈夫そうですよね?」

その言葉で、風呂にも入らず一晩中、俺の看病をしてくれたんだと理解する。

「はい、ではもう少し休んでますね」

俺の返事に、にこりと笑って彼女は部屋を出た。

掛け布団を身体に乗せると、ふわりといい香りが漂う。
寝てる時に感じたのはこの匂いだったのか…

たまに職場でふわりと香る…
麻依さんの香水の匂い…か…




…うわぁ、たまんねぇ!

掛け布団をぐるりと巻き付け、大きく息を吸い込み匂いを堪能する俺。

…すうぅ……っはー…

…すうぅ……っはー…

はぁ……最高……

俺の肺、全部この空気で満たしてぇ…




…あぁ、いいよ、変態で。

ていうか、今の俺、結構好きかも。
変態だけど。

何だろう、今までの俺から解放されてる感じがする。
とても気持ちがいい。

…でもこの変態っぷりは絶対に麻依さんには見せられないからな、ほどほどにして…イイコで寝ていよう。

でも…


…んー、眠れない…
…微かに聞こえる水の音…
…シャワーか…

つか、病人とはいえ男に「シャワーしてくる」って言っちゃう?
それヤバくない?
つか、俺、男として見られてない?

…あーそんなことどーでもいー
…麻依さんがシャワー…
…どんな…
…いや、俺、想像するな。寝ろ。
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