本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
彼女が修平に媚びを売ったことは一度もなく、ともに働く医療者としてしか見ていないのが心地いい。

それに真琴から幼馴染だという話は聞いており、フルネームで名前を記憶に留める程度にはいい印象を持っていた。

それでも笑顔はなく淡白な受け答えになるのは性格上のことなので仕方ない。

「なに?」

「前々からお伝えしなければと思っていたことがありまして――」

香奈が意を決したように固い表情で話したのは、患者やその家族に対する修平の態度だ。

冷たくせず、もっと親身になって話を聞いてあげてほしいと言われた。

腹は少しも立たないが、心当たりがないため首を傾げた。

「冷たくしているつもりはない。説明責任は果たしているし、最後に必ず質問はないかと問いかけてもいるが」

先ほどの家族もそうであったが、なにも答えなかったり、あるいは『ありません』という返答だったりが多い。

修平はそれを医療者にすべて任せるという意思表示だと捉えていた。

しかし香奈に否定される。

「質問がないのではなく、現実に心がついていけなくて思い浮かばなかっただけなんです。患者さんとご家族はショックと大きな不安の中にいるのですから」
< 105 / 211 >

この作品をシェア

pagetop