本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
しかし今日は対策をしているので、その言葉を待ってましたとばかりに強気に出る。

「そう言うと思いまして」

フフと不敵に笑った真琴は、ひとつだけ別に取り置いていた弁当を水戸黄門の印籠のごとく突きつけた。

透明のプラスチックの蓋に貼られたラベルには、六百九十円の値と『生嶋用弁当』という商品名が印字されている。

量が少なめの五目おこわに鰆の西京焼き、根菜とこんにゃくの煮物と菜の花のお浸し、卵焼きとたくあん、三十代の青年ならこってりした総菜も少しは欲しいだろうと甘辛鶏つくねもひとつ入れた。

(どうですか。これなら文句はないでしょう)

挑戦的な笑みを浮かべて胸を張った真琴を、修平は無感情に見ている。

まだ不満を言う気かと焦ったが、弁当を受け取った彼によしよしと頭を撫でられ目を丸くした。

「えっ......」

思わず驚きの声が漏れる。

三角巾越しに感じる大きな男らしい手に心臓が波打ち、顔に熱が集中した。

(生嶋先生って、突然こういうことする人だったの? ポーカーフェイスすぎて、なに考えているのかわからないからびっくり)

驚きの波が去った後にはくすぐったい喜びが湧く。
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