本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
特別に作った彼用の弁当を気に入ってもらえたことと、頭を撫でられたことに対してだ。

(子供の時、以来かも)

同じくらいの身長の守也に頭を撫でられた経験はなく、修平に十センチほど上から見下ろされると自分が小さくなった気もして、それも嬉しかった。

気分をよくした真琴は、迷惑な客だという修平の位置づけを改めようかと思ったが、手を下ろした彼に余計な指摘をされる。

「客の要望にすぐに応える姿勢は感心する。だが〝生嶋用弁当〟という表記は問題だろう。商売人として、敬称はつけた方がいい」

この弁当はてんてこ舞いの忙しさの中で作ったものだ。

敬称のつけ忘れくらい、大変だったのだろうと察して見逃せばいいのにとムッとした。

「先生が言うべきなのは、わざわざ俺用に作ってくれてありがとう、ではありませんか? ひとつだけ別のものを作るのって時間を取られて大変なんですよ」

「そうか。弁当屋だから、これくらいの弁当を作るのは造作もないと思ってしまった。すまない」

「嫌味ですか?」
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