本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「君に嫌味を言う理由はない。明日もこれと同じ弁当を頼む。ただし鶏つくねじゃなくカニシュウマイにしてくれ。肉より魚介が食べやすい。君は肉と魚介、どっちが好みだ?」

修平が真琴に質問をぶつけてくるのは毎度のことだ。

趣味や休日の過ごし方、家族構成などかなりプライベートな問いかけに困惑するとともに、忙しく客対応している時も聞いてくるので嫌がらせかと疑っている。

「どうして私の好みを知りたがるのかわかりませんけど、お肉と魚介、どちらも同じくらい好きですよ」

今は他に客もいないので答えたが、迷惑だという感情は下がった眉尻に表れてしまった。

その時、笑い声と足音が循環器外科病棟の方から近づいてきた。

「また言い合いしているのか」

若干腹周りが太めで四角いフェイスラインに愛嬌のある目元が特徴の彼は、関根という。

修平の上司にあたる心臓血管外科医で、年齢を尋ねたことはないが四十代前半くらいだろう。

関根もたまに花福の弁当を買ってくれるが、今日は財布ではなくファイルを手にしているので、どこかへ移動する途中だと思われた。

修平の隣に立って肩をポンと叩いた関根は、目尻に皺を寄せて真琴を見た。
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