本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
もちろん冗談なのはわかっているが、表情の乏しさや人間離れしたようなタフさを聞いてその例えがしっくりときた。

(私にだけ口数が多いのは、生嶋先生を動かすシステムのバグ?)

などと考えていたが、関根の顔が飲んだコーヒーの香りがするくらい近距離にあるのが気になった。

真琴が心持ち頭を後ろに引くのとほぼ同時に、関根が勢いよくのけ反った。

修平に後ろ襟を思いきり引っ張られたためで、首が絞まったような苦しそうな呻きが聞こえた。

「頸椎捻挫させる気か!」

「近すぎです」

「は?」

関根はパーソナルスペースが人より狭いタイプなのだろうか、修平の注意にピンときていない様子だが、真琴は助けられたことに気づいて驚いている。

(もう少し離れてほしいという私の気持ちを察してくれたのかな。生嶋先生は、意外とよく気のつく人?)

けれども商売中にプライベートな質問をあれこれとぶつけてくるのを考えれば、そこまでは言えないと思い直した。

「あの、すみませんが私はこれで......」

視線をぶつけあっているふたりに遠慮がちに声をかけた真琴は、店じまいをするべくすべてのフードテナーを台車に積んだ。
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