横浜山手の宝石魔術師


「インカローズでの事件を朱音さんが気にしていたのに何も話さなかったのには理由があります。

それは僕達魔術師としての領分になるためお話し出来ませんでした」


朱音は手にしていたブローチの入った箱を机に置き、頷く。


「あの時裏で関わっていた魔術師がまた動き出しているという情報を得て僕達もずっと動いているのですが、朱音さんもあの占い師と関わってしまった以上身を守るためにあのラブラドライトを持っていて欲しいのです」


「もしかしてあのラブラドライトはジェムだったんですか?」


「えぇ。なので預かっていた時に僕が本来の持ち主、朱音さんを守るためのジェムとなるよう調整しました。

そして今回差し上げたラピスラズリのブローチも可能であればつけておいて下さい。

今の時期ならコートとかにはつけられると思いますので」


「このブローチもジェムなんですか?!」


アンティークの宝石にはジェムが多いのだろうかと朱音は驚く。


「それはジェムではありません。

ただラピスラズリはかなり古くから装飾品として、そしてお守りとしても使われてきました。

ラピスラズリ自体がとても良い品だったから買ったのですが、そういう意味を持っている宝石に目が行ったのは何かの縁かもしれません。ですからお守り代わりにつけていて欲しいのです」


なんだか冬真が色々と心配してお守りを沢山持たせてくれている気がして朱音は口元が緩む。

この紺色の石なら、今よく着ている紺色のコートよりもう一つあるベージュ系のコートが合いそうだ。



「あの、ラピスラズリの所々にある金色のはもしかして金が混ざっているんですか?」


「いえ、それは金では無く、パイライトという鉱物です。

この本体の濃紺とこの金色がまるで夜空に浮かぶ星々と同じような美しさを感じるのが魅力でもあり、そのバランスが良いものが良い石とされています。

ラピスラズリは宝石と言うよりパワーストーンの方が今は人気がありますので、ラピスラズリと称してただの白い石を青く着色しているものを本物と称して売っているところもあるので気をつけて下さい。

ちなみにラピスラズリは絵具の材料にもなっていてウルトラマリンと呼ばれていますが、その美しい青色に魅せられ描かれた有名な絵画も数多くあります。

金よりも高価なその絵具を使うのは、絵画自体に宝石を埋め込んであるようなものかもしれません」


興味深く頷きながら朱音は聞いていたが、ついさっき聞こうとして忘れていたことをやっと思い出した。

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