双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「要するに、百パーセント家族になるって決めた後でいいってこと。単なる〝彼氏〟なら、会う必要はないって言ってるんだよ。だって考えてもみろよ。毎回紹介されてたら、ハルが別れるたび気まずい知り合いが増えるだけだろ?」
 海斗の言い分を聞き、納得できる部分はある。振り回される可能性もあるという話だよね。
「うーん。確かに一理ある......けど雄吾さんとは」
「『とは』? なに? まさか特別だと? だって前に会った時には彼氏いなかっただろ。つまり、まだ付き合って日が浅いはずだよな。言っとくけど、人生に〝絶対〟はない」
 ぐうの音も出ない。
『雄吾さんとは』――その後になんて言おうとしたの? 私。
 まだ彼との関係は始まったばかり。当然まだ将来についてなにも話し合っていない。っていうか、自分が独りよがりの願望を抱えていたのだと今知って恥ずかしくなった。
 雄吾さんとは、私の人生の中でなにより特別な出逢いだった。しかし、それがどうして相手も同じだと錯覚していたんだろう。こんな浅ましい自分、嫌だ。
 とはいえ、海斗も海斗で現実を突きつけるようなことを冷たく言い放たなくたって。せっかく数五年ぶりに恋人ができたって報告した今日くらい、祝ってくれてもいいじゃない。
 私は頬を膨らませ、顔を海斗からふいっと背けた。
「ホント、弟じゃなきゃ、こうして一緒にご飯食べたりしてないんだから」
「俺だって姉じゃなかったら、機嫌損ねるのわかっていてこんなこと言わないよ」
 海斗をチラッと見れば、頭の後ろで手を組んで口を尖らせている。
 言われた言葉はきつかったけど、正論だし悪意があったわけではないのも本当はわかっている。
 だって、貴重な休日をわざわざ姉の私に割くような弟だもの。
「あーあ。雄吾さんも弟がいるみたいだから、海斗と仲良くなりそうかなって思ったのにな」
「あ。ハル、『弟がいる』ってわざわざ言うなよ。会いたがられたら面倒だから」
「わかったわよ。もうっ」
 それから私は運ばれてきた料理を食べた後、しっかりデザートまでごちそうになったのだった。

 次の土曜日。
 海斗が言っていた通り、週の中日から見事に雨ばかり。
 まあ季節柄仕方のないこととは思いつつ、やっぱり気持ちが憂鬱になりがち。
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