双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 片時も目をそらさずに古関海斗へ決意表明をすると、彼はなんとも言えぬ真面目な表情で、ぽつりと答える。
「せいぜい頑張ってください」
 そうして彼は、悪びれもせずに先に行かせていた彼女の後を追って行った。

   *

 今夜も穂貴と詩穂は布団に入るなり、すぐに寝た。保育園でたくさん遊んで疲れていたのだろう。
 その後私もお風呂を済ませ、十時半頃に再び薄暗い部屋に戻ってふたりの寝顔を見つめていた。自然とこぼれた笑顔を、ふっと消す。
 雄吾さん......ショックそうな顔してた。逆の立場になったらと考えれば、彼の気持ちは痛いほどわかる。けれども、咄嗟に嘘が口を突いて出てしまった。
 これでもう、本当に終わりだ――。
 とてもひと言では表現できない感情が溢れ、思わず胸を押さえた。そこに襖をノックされる。気持ちを落ち着かせて「はい」と返事をすると、そーっと襖を開けて顔を覗かせたのは海斗だった。
「あ、海斗。おかえり」
「ただいま。おー。ぐっすり寝てるな。すごい寝相だ」
 ふたりの寝姿を見るなり小声でそう言って、笑いを押し殺している。
 私は布団をかけ直してくれる海斗に謝った。
「あのさ。今日、本当ごめん。急にあんなこと言って」
 保育園に迎えに行った時に、雄吾さんに向かって吐いた嘘の件だ。
 彼と別れた後、海斗からは即、事情を説明するよう詰め寄られ、彼が双子の父だと改めて伝えた。
 海斗は私の事情を詳しく知っている唯一の人間だ。だから、今日は私の咄嗟の嘘もなんとなく察してうまく合わせてくれた。
「それはいいけどさ。実は俺、さっき楢崎さんに偶然また会ったんだよね。もしかしたら、俺が弟ってことバレるの時間の問題かも」
「えっ」
 思わず声のボリュームが大きくなり、私は慌てて両手で口をふさいだ。
 まさか一日に二度も? 本当、雄吾さんとはなんだかそういった縁がある。
 自分がいない時にふたりが遭遇した話を聞き、続きが気になって仕方がない。食い入るように海斗を見ていたら、スッと立ち上がった。
「ちょっと来て」
 海斗に誘われ、寝息を立てるふたりから離れ、海斗の部屋へ行く。入るなり、一冊の雑誌を開いた状態で渡された。
 海斗から受け取った誌面の隅には、十五センチ四方程度の写真。その中に映っているのは、知らない美形な男の人と可愛らしい女の人だった。
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