双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「これ、発売当時から見せるか迷ったやつなんだけど。その下の写真の人だろ。ハルが昔話してくれた、楢崎さんの政略結婚の相手って」
 そう言われて、ようやく気づく。
「......多分。こんな雰囲気の人だったかも。でも間近で顔を見たわけじゃないから。それにもう数年前のことだし。どうしたの? 急に」
「いや。なんつーかさ。違和感があったんだ」
「違和感って?」
 海斗は私の手から雑誌を抜き取り、写真に視線を落として答える。
「この政略結婚相手の話題に触れた時、あの人驚いてはいたけど、図星をつかれたものじゃなくて......こう、まるで初耳みたいな反応だった気がするんだよな。後ろめたさとかまったく感じられなかったし」
 海斗自身もはっきりわからないような、そんな口調だった。
 だけど、私は聞かずにはいられなくてさらに問い質す。
「それ、どういう......」
 タイミングの悪い時に、スマートフォンの短めの着信音が響いた。
 それは海斗のもので、海斗はジーンズのポケットからスマートフォンを出して操作する。
 その短い沈黙の間にも、私は今しがた話していた件が気になって仕方がない。
 さっきの海斗の話し方だと、まるで雄吾さんが弟さんを巻き込んだ縁談を一切気にしていない冷たい人みたいな感じだった。だけど、私の中での雄吾さんはそういう人じゃない。彼はいつも優しくて、誰かを犠牲にするなんて......。
 そこまで考えて、はっとしたのと同時に海斗が声をあげる。
「おいおい。なりふり構ってられない感じ」
 驚き交じりに苦笑する海斗は、スマートフォンを私に渡してきた。私は首を捻りながら、そろりと受け取る。
 ディスプレイを見て、心臓が大きく跳ね上がった。
【彼女にもう一度だけ話をしたいと伝えてほしい。 楢崎】
 大きく見開いた目には、要約された一文のみが表示されていた。
 頭の中が混乱して、私は無意識に助けを求めるように海斗を見上げる。
「あー。今日俺、名刺渡したからな。楢崎さんも本当は俺に連絡なんてしたくなかっただろうに。どうする? ハル」
 海斗に連絡がきた経緯を理解し、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。
 私は彼からのメッセージを今一度、瞳に映し出し、数秒考えて口を開く。
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