秘め事は社長室で
「これが防犯ブザーで、こっちは催涙スプレー、これはスタンガンほどでは無いんですけど、相手の肌に押し付けると電流が流れるそうです! 最近の防犯グッズって一見おしゃれな小物みたいですごいですよね。どれも小型で持ちやすいのを選んだので」
どうぞ! 笑顔で両手を広げた私を、社長は不可解なものを見る目付きで見上げた。失礼な。
「そういう説明が欲しかったわけじゃない。……分かっててやってんだろ」
「まあ」
いきなり防犯グッズ押し付けたところで怪訝な顔されるのは分かってたから勢いで押し切ろうと思ったけど、やっぱり社長相手じゃ無謀だったか。
健が押しかけてきてから、ずっと考えてた。
健はかなり社長を意識してた。ああは言ったものの、果たして納得してくれたかどうかは怪しい。
見るからに情緒不安定だったし、もしかしたら社長にまで迷惑をかけようとするかも。そう思い、気がつけば防犯グッズをかき集めてた。
さすがに我に返ったときは頭を抱えたけど買っちゃったものは仕方ない。勿体ないし、いざと言う時役に立つかもしれないし、万が一にも社長に怪我なんてさせられないし。
「社長、見るからにお金持ちそうだから狙われるかもしれないし、私心配なんです。……邪魔なら捨ててもいいですけど」
私の元カレに狙われてるかもしれないんで護身してください。なんて言えないのでそれっぽい理由を付けてみる。
でも、白々しさは隠しきれなかったようで社長の目つきは変わらなかった。
「少なくとも俺は、あんたよりは警戒心も力もある」
「馬鹿にしてます?」
「こういうのはあんたの方が持つべきだろ」