密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
「責任は取る」

耳もとでささやかれ、背中がゾクッとした。

……責任?
責任取るってどういうこと?

頭の奥がぼんやりしていて、夢か現実かわからなくなってきた。

再び熱っぽいキスを交わされると、もつれる足を絡ませながらベッドルームに向かう君塚先生の足取りに従うすべしかなくなってしまう。

キングサイズのベッドに私を組み敷いた君塚先生は、片手を私のブラウスの裾から侵入させ、もう一方の手で器用にネクタイを緩めた。

「かわいい。優しくする」

熱にあてられ、頭がボーッとする。

君塚先生が私のブラウスを脱がせると、首筋から肩、鎖骨と順番にキスを降らせた。

その間中も手際よく、ブラの中にするりと骨っぽい手を滑り込ませ、胸の先端を指先でちょんと触れる。

「あっ……」

久しぶりの感覚に体が跳ねた。

何年もご無沙汰で、しかもひとりしか男性経験がない。
下着の上から指の腹でなぞられると、全身が軽く痙攣したようにぴくんと反応した。

君塚先生は表情を崩さず、とても端正な顔で私の反応を見下ろしている。やや乱暴にワイシャツを脱ぐと美しい肉体美が現れた。

こんな余裕のないときでさえも、見惚れるくらいカッコいい。

「……っ」

ああ、一体どうしてこんなことになっているんだっけ……。

弱いくせに早いピッチで飲みすぎたビールに酔ったのか、悲しさを埋めるために誰かと肌を重ねたいのか、仕事のときのクールな印象とは違う優しい君塚先生にほだされたのか。

どれも正解のような気がする。

『きみは、もっと誰かに甘えるべきだ』

さっきの言葉、うれしかった。
本当はずっと、誰かに頼って甘えたかった。

君塚先生の強引だけど丁寧な愛撫に、甘えて溺れてしまいそう。

『ひとりで全部背負い込んで、声を我慢して泣くのは辛いだろ?』

どうしてわかるのだろう?

君塚先生はただ、かわいそうなやつだと同情しただけかもしれないけれど、私は今一番理解してくれるのはこの人しかいないんじゃないかとさえ思えた。

『俺に、全部委ねるか?』

たった一夜だけでいい。
私を甘やかしてほしい。
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