密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
春香の両親が交通事故で亡くなったのは、彼女が中学生の頃だと父から聞いている。
その頃も辛い中で、常連客たちの前では笑っていたのかと思うと、胸が張り裂けそうだった。

今の彼女にも、寄り添う誰かが必要だ。冷えた心を包み、弱った体を温める存在が。
そうじゃないと、すすり泣く彼女がこのまま消えてしまうのではないかと不安に思えた。

弱みにつけ込むようで気が引けたが、俺は春香を強引に抱いた。
女性に対して自分の衝動が抑えられないという初めての経験に動揺する一方で、彼女をこのまま手放したくない一心だった。

春香がこのタイミングでうちの事務所に来てくれたことは不幸中の幸いだったと思う。

もしも彼女が俺と再会していなければ、依然ひとりで暗く塞ぎ込んだままだったかと思うと胸が締めつけられる。
名刺を大切に保管してくれていた千代さんに感謝したい気持ちであふれていた。

翌朝、目覚めた春香はまだアルコールが残っているのか虚ろな表情で、昨夜の行為を思い出しかなり戸惑っている。
そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、俺は契約結婚を提案した。

もちろん三ヶ月で離婚するというのは、彼女に低ハードルで結婚という契約を締結させるための方便にすぎないつもりだった。

自分の気持ちを打ち明けて、ずっと離さないでいられたらどんなにいいだろうと、三ヶ月間思わなかった日はない。

しかし彼女は俺の思いとは裏腹に、自ら用意した離婚届にすでに記入を済ませ、プレゼントまで用意してくれていた。

そして。

『それでしたら、できれば今夜、一緒に寝てほしいです……』

予想もしていなかった言葉に、俺はしばらく動けなかった。
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