偽物のご令嬢は本物の御曹司に懐かれています
 冬弥君は子犬から狼にモードチェンジしたかと思うと、艶やかな顔を私に寄せる。

「んっ……」

 甘く淫らに口づけされて反射的に吐息が漏れた。自分でも煽っている自覚はある。でも止められるはずもなく応えてしまう。
 時折聞こえるのは、バスルームの水滴が落ちる音なのか、私たちから漏れる音なのか区別はつかない。温まった体から吐き出され息はどんどんと熱を孕んでいった。
 しばらく唇を貪られたあとそれが離れると熱を帯びた瞳を向けられた。まだまだ狼モードは継続中のようだ。

「ちーちゃん。僕と結婚してくれてありがとう。凄く幸せ」
「私も。こんなスパダリでイケメンと結婚できるなんて、未だに夢なのかと思っちゃう」
「スパダリでイケメンなのかはわからないけど……夢じゃないよ。だって……」

 そう言って冬弥君はニヤッと笑う。いつのまにかこんな悪い顔もできるようになってしまった。してしまったと言うのが正解かも知れない。
 そんな冬弥君は私を立たせると、そのまま壁ドンに持ち込んだ。バスルームなんだからもちろん全裸。今からされることを予想するだけで体温が上がりそうだ。

「……ほら。ここ、もうこんなになってる。夢じゃないでしょ?」

 耳元でそんなことを囁きながら、冬弥君の指が閉じていたあわいを撫でる。

「やっ……」

 ヌルリとした感覚が自分でもわかるくらい蜜が溢れている。冬弥君は嬉しそうに息を漏らして笑うと言った。

「今日は……このまましていい?」

 焦らすように蠢く指に翻弄され震えながら顔を上げる。私が欲しくてしょうがないっていうその表情を私しか知らないのだと思うとキュンとしてしまう。

「うん。いいよ。……早く子どもができたらいいなって思ってるし」

 その返事に冬弥君は目を細めて笑みを浮かべた。

「僕も。夏帆ちゃんのところと同級生になったら嬉しいよね」

 夏帆は、私たちより一足早く計画的な授かり婚をしたのだ。その理由が、本当にお見合いさせられそうだったから、なんて言っていたけど今はとっても幸せそうだ。

「だね。じゃあ……頑張っちゃう?」
「……今日は寝かさないからね?」

 そう言うと冬弥君は私の唇を塞いだ。

 ――どうやら私は、子犬ではなく狼に懐かれて、一生離れられないみたいです。

Fin
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