冷厳な不動産王の契約激愛婚【極上四天王シリーズ】
正直な声が漏れた。

この企画は甘いと見抜いているのに、彼は膨大な調査と計算をしてきたはずだ。

正直、無駄だと思っているのではないだろうか。


「俺たちは、勘ではなく数字で示すのが仕事だ。不動産投資で大金を稼いでいる人たちは、様々なシミュレーションをしているからこそ成功している。ピンとくる感覚は必要でも、それを証明するのはあくまで数字だ」


やっぱり秋月さんは天才なだけでなく、努力の人だ。

有能すぎて簡単に案件を処理しているように見えるため、努力をしていないように思われがちだけれど、誰よりも基本に忠実なのかもしれない。


「そうですね。肝に銘(めい)じておきます」


そう返すと、彼はなぜか私にくれたコーヒーを手にして飲んでしまう。


「なんだこれ、甘すぎる」


眉間にシワを寄せて苦言を呈する彼を前に固まった。

――これ、間接キスじゃない。

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