冷厳な不動産王の契約激愛婚【極上四天王シリーズ】
彼の形のいい唇は、メイクを落とした私のそれよりきれいな色をしている。

その唇が、私が使ったストローでコーヒーを飲んだと思うと、妙に恥ずかしくて鼓動が速まってしまった。


「CEOの岩波(いわなみ)さんが、コーヒーには自信があるからブラックで飲んでほしいと言ってたぞ」

「す、すみません。努力します」

「冗談だ」


こんなふうに口の端を上げて笑う彼は記憶にない。
仕事が終わってリラックスしているのだろうか。


「今日はもう帰ろう」
「はい」


もしかしたら、自分が頼んだ仕事だからと待っていてくれたのかもしれない。

それなら申し訳ないと、急いでパソコンの電源を落として、デスクに出してあった資料をバッグに突っ込む。

ところが急ぎすぎて、落としてしまうありさまだ。


「あっ……」


使い込んでボロボロになったノートを拾おうとすると、秋月さんの手が重なった。

< 24 / 38 >

この作品をシェア

pagetop