*触れられた頬* ―冬―

[26]順番と強い瞳

 エントランスから細い廊下を進み、突き当りの右手には小さなキッチン、その向かい側に当たる左には簡素なダイニングと、通りから見えた窓越しは広めのリビングだった。

 其処まで案内をしてくれた女性が凪徒に何やら声を掛けたので、ダイニングとリビングの境い目で突然足を止めた凪徒の背中に、モモは危うく顔を突っ伏しそうになった。

「向こうの部屋にいるから、少し此処で待っててくれってさ」

 振り向いて見下ろした凪徒の向こうには、確かに続き間らしきアコーディオンカーテンの仕切りがあり、女性は一度モモと目を合わせ微笑んで、その先へと消えていった。

「俺、席を外しておこうか? それともいた方がいいか?」

 声のトーンを押さえた凪徒の質問に、モモはすがるような表情と……そして本当にすがりついていた。凪徒の両腕を(つか)み、心細そうな瞳を揺らす。

「先輩……先にお母さんと話してくださいっ」

「えっ、お、俺!?」

 その驚きと共に再び女性が現れ、アコーディオンカーテンが端まで引き寄せられた。

 少し薄暗い奥間には確かに人影が見えて、モモは慌てて凪徒を振り向かせ、背後に隠れた。


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