*触れられた頬* ―冬―
「だから、な? 今朝の『アレ』位、ご褒美ってことでいいよな? なっ?」

「え……」

 凪徒の思いがけないプレゼントに、モモは感動で言葉を失い、涙さえ溢れそうになった。

 が、まるで悪戯(イタズラ)っ子のような言い訳をされて、途端見開かれていた(まなこ)は点になった。

 若干納得が行かないが、余りある贈り物であることには間違いない。

 それに──。

 ──先輩が、あたしの『あの姿』を『ご褒美』って言った──。

「こ、今回……だけは、許します……」

 モモは微かに鼻の頭を赤くし、横目で視線を外しながら、小さな声で承諾をした。

 再び立ち上がり、勢い良く身体を二つに曲げ、元気良く感謝の言葉を告げる。

「ありがとうございます! 先輩!!」

「礼は帰国したら、親父に言ってやってくれ」

 姿勢を戻したモモの笑顔に、はにかんだ凪徒の顔が(まばゆ)く反射をした──。



[註1]赤い場内:時期で内装が変わるようですので、現在は赤くないかも知れません。


[註2]公演時間:調べましたところ、公演時間が「一時間半」と「二時間半」の二つに割れまして、現状どちらなのか調べきれませんでしたので、間を取って「約二時間」と致しました。


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