*触れられた頬* ―冬―
 やがて全員が『(こと)』を済ませて、今度は凪徒がその集団に詰め寄られた。

「(何だ? どういうことだ!? ナギト!! どうしてあんな筋肉のない腕で、彼女は飛べるんだ!?)」

「どうしてって言われても……」

 ──俺の方がよっぽど知りたいっての……。

 苦笑いを浮かべて「(これが人体の神秘って奴だな)」と言うより他なく、納得されないまま何とか諦めてもらった。

「あぁ……怖かった」

 モモだけは襲われた理由に納得し、安堵の溜息をついた。

 十分ほど身体を休ませて、再び天を見上げたが、

「あの……先輩、本番の衣装を着けて、練習してみても良いですか……?」

 ほんのり頬を赤らめて尋ねる。

 あの姿を見られるのはどうにも恥ずかしいが、避けていては練習が進まない。

「あ、ああ……そろそろ準備しておかないとな。んじゃ、着替えてこいよ。俺も着てくるから」

「はい……」

 モモは凪徒の顔を見られないまま、(うつむ)いた視線を戻さず返事をして、いそいそと衣装室へ小走りで向かった。

 凪徒はそんなモモを見送って、フッと息を吐き出し立ち上がった──。


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