*触れられた頬* ―冬―
 ──み、みんな見てた……。どうしよ……下手だな~って思われてるのかな……。

 支柱の根元でおどおどしながらタオルを胸の前で握り締めたモモに、相変わらず表情もなく沈黙したまま近付く団員達。

 同時に降り立った凪徒は、まるでゾンビの集団に襲われるかのようなモモを遠目に見て、その異様な光景に思わず走り寄った。

「お、おいっ、……えーと……シトー ス ヴァーミ?(どうかしたか?)」

「……え? え!? あのっ……せ、先輩!」

 団員達の壁に(はば)まれて見えないが、向こう側で戸惑うモモの救いを求める声が、その隙間から(こぼ)れてきた。

「えっ……あっ、た、助けて! きゃああ!!」

「モモっ!?」



 ──ガシッ!! ムニムニ……



「……へ……?」

 思わず飛び出る間抜けな一文字。

「モモ!!」

 やっと割って入った凪徒の眼には、両腕をまくられ順に前腕をニギニギされる、涙ぐんだモモが映っていた。

「何されてるんだ、お前……」

「わ、分かりませんっ、あたしが教えてほしいです!」


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