*触れられた頬* ―冬―

[40]リメイクとリハーサル 〈Ni〉



 静まり返った衣装室には、昨日と同じくニーナだけが存在した。

 丸椅子に腰掛けた端正な横顔は、少し上方を目指していて、(つや)のある唇は優しい微笑みを(たた)えている。

「ズドラーストヴィチェ(こんにちは)、ニーナさん」

 ニーナの(たたず)む空間がやけに満たされたような流れを帯びていて、モモは一瞬言葉を掛けることをためらった。

 が、凪徒を待たせている場合ではない。

「Hi, Momo! How are you? I wait for you. You know……how is this?(あ、モモ! 元気? 貴女を待ってたの。ね……これ、どう?)」

「え……?」

 こちらを振り返ったニーナは、モモとの再会を心から喜んでいた。

 そして問う、再び戻した視線の先の──

「あっ!」

 モモは刹那に大声を上げた。

 ニーナが示したのは、壁に掛けられたモモの衣装、あの純白のチュチュ風ドレスだった。

 立ち上がり、その衣装を手に取るニーナ。

 ハンガーから外し、顔前で目を見開くモモの身体に当ててみる。


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