*触れられた頬* ―冬―
 十八本の赤や緑のローソクを吹き消し祝福されたモモは、もう食べられないというところまで母親の手料理を堪能した。

 食後に別腹だからとケーキも平らげ、甘い紅茶でホッと息をついたモモは、移動したリビングの既に自分の特等席のようなソファに腰掛けた。

 途端隣からそっと差し出された両掌程度の小箱に、驚いて椿の顔を見上げていた。

「改めて……十八歳のお誕生日おめでとう、桃瀬。私からのプレゼントよ」

「お母さん……」

 まさかバースディ・プレゼントまであるとは思わず、大きな瞳をパチクリさせてしまう。

「良かったら、開けてみて」

「は、はいっ」

 優しいハート模様の包装紙を(ほど)き、中の紙箱を開いて取り出されたのは、ピンク色の愛らしいマトリョーシカだった。

「可愛い!」

 モモは自分の分までは買えずにいたので、一層嬉しく感激した。

「中をどんどん出してみて」

 椿の言う通りに上下に開いては、一回り小さな同じ人形を取り出していく。

 六つ目で終わりを告げ、中から光り輝くうずらの卵程の小さなペンダントヘッドが現れた。


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