*触れられた頬* ―冬―
「ありがと……う、ございます! あり……がと……──」

 けれどやはり渦巻いた黒い煙がモモを縛りつけていた。

 ──あたしは……みんなを、(だま)している──。

「ご、めん……なさい、ごめん、なさい……──」

「モモ?」

 その謝罪に誰からともなく疑問の呼び掛けが上がり、皆の寄せる足並みも止まってしまった。

 シンと静まり返った道端に、モモのすすり泣きと()びる言葉が淀んでは繋がる。

「ココは「ありがとう」だろ~モモ! なぁ?」

「そうだよーずっとお休みしたからって、謝らなくてもいいんだよ!」

 周りの困ったような慰めの言葉に、モモは益々顔を上げられず、泣くのを止められなかった。

 モモの後に続いていた凪徒の許には、暮と鈴原が歩み寄り、凪徒と同じように困惑していた、が。

「おい……あいつ、何なんだよ」

「……」

 ──暮?

 凪徒の(いぶか)しげな質問に返事もせず、暮はスタスタとモモの背中に近寄った。

 人ごみを掻き分け、モモの目の前に立ち、そして──

「モモ」

 ──え?

「「「えええっ!?」」」

 暮の意外な行動で、全員が一挙に目の玉をひっくり返しそうになった。

「く……れ、さ……?」

 モモの名を呼んだ直後、暮はモモをひっしと抱き締めたのだ。


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