*触れられた頬* ―冬―

[50]洸騎と凪徒

「橋本 洸騎と申します。モモの施設の同期で、赤ん坊の時からの幼馴染(おさななじ)みです」

 凪徒は洸騎を会議用プレハブに案内し、ストーブの焚かれた暖かな部屋で、二人は長テーブルを挟んで着席した。

 ──何だ……またモモの関係者か。俺に用だなんて、まさかデコピンするなってクレームじゃないよな……もうかれこれ一年も封印してる筈だぞ?

 凪徒は視線を(くう)へと上げて口の端を歪ませた。

 昨春の双子のメイド:桔梗から(いまし)められた台詞(セリフ)をふと思い出す。

「で……モモの兄弟が、自分に何のご用で?」

 洸騎のいやに真っ直ぐな眼差しに居心地の悪さを感じ、凪徒はいつもの『お客にだけはにこやかな』笑顔を向けてみた──が。

「僕はモモを妹だなんて一度だって思ったことはありません。モモに……ずっと恋してきましたから」

「え?」

 洸騎の瞳が一瞬睨むように細められ、凪徒はその突然の告白に、(かす)かな驚きの声を(こぼ)していた。


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