*触れられた頬* ―冬―
「ありがとうございます! あのっ、これからも頑張ります!! それから……お父様、杏奈さん、先輩のお父様……あ、あたしのふるさとを救ってくださいまして、本当に……本当にありがとうございますっ!」

 モモは再び勢い良く立ち上がり、元気良く腰を折った。

 そんな清々(すがすが)しい姿を目に入れて、桜社長は少女の逆さになった後頭部に声を掛けた。

「いや、感謝するのはこちらの方だよ。君は児童養護のスペシャリストを紹介してくれた。それに……これから君には、凪徒が随分世話になりそうでもあるし……そのお礼と思ったら安いものだ」

「え?」

 モモは後半現れた、凪徒の名前と意味不明なお礼、そして隼人の含み笑いに瞬間(おもて)を上げた。

 残りの面々も意味深な雰囲気を持ちながら、破顔してモモを見つめている。

 ──お世話になっているのはあたしの方なのに……あたしが先輩をお世話?

 モモはその疑問を尋ねられないまま、涙の消え去った瞳を(またた)かせた──。


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