*触れられた頬* ―冬―
 ──な、んだった……? 何があったの? だ、誰か教えて!! 先輩、あたしに何したのー!?(註1)

 事態が呑み込めないまま満天の夜空を見上げ、額に起きた『事件』の真相を探ったが、初めて得た優しい感覚は、モモの記憶の何処(どこ)にも見当たらなかった。

 両手をジャージのポケットに突っ込んで、ズンズン歩く凪徒もふと立ち止まり、(きら)めく星々を見上げる。

 ──団長、とにかく『約束』は守ったぞ! まったく……『待て』を言われた犬の気持ちが、痛いほど分かったぜ!!

 拘束された時間を思えば、そんな呆れた約束への(いか)りよりも、やり遂げたという達成感が、心の中を爽やかに吹き抜けていった。

 微かに笑みが浮かび、胸の内から湧き上がる喜びが、口の端をニヤリと上げさせた。



 ──何はともあれ、待ってろ、モモ!



 =お前……解禁だっ!!=



[註1]額に触れた何か:桃瀬さん……それは『口づけ』というものです♡


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