*触れられた頬* ―冬―

[57]遠い?春 と 近い?春

 モモはしばらく立ち尽くしていたが、ハッと我に返り、自分の寝台車から沢山の土産を手に取って、再び団長室に舞い戻った。

 が、話の邪魔になってはいけないと即座には渡さず、とりあえず打ち合わせが終わるまで「会議室で待っています」と声を掛けた。

 暖かな会議用プレハブには凪徒が話した通り、じっと動かない洸騎がいた。

 入室と同時に強張(こわば)った顔を上げ、困ったようにモモを見上げる。

 モモは静かに凪徒の座っていた椅子に腰掛けて、凪徒に話した同じ内容と、ずっと先延ばしにしていた洸騎への返事を告白した。



 =ごめんね、洸ちゃん。あたし、大好きって言える人と出逢えたの。=



 モモは淀みない声でそう告げた。

 洸騎は一瞬呼吸を止めたが、深く長く内なるものを吐き出して、うっすらと微笑み、そして満面の笑顔を見せた。

「良かったな、モモ。これからもみんなと一緒に応援してるから……ブランコも、恋、も」

 モモはその言葉に偽りのない気持ちを感じて、同じく満ち足りた笑みを返した。



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