*触れられた頬* ―冬―
「うーん……上手く説明出来ませんけど……高岡のお父様とは何かが違うんです。何でしょ……暮さんの優しさは母性を感じさせるって言いますか……」

「母性……」

 その答えに唖然としたが、それよりも他の質問が湧き上がり、暮はニヤッとモモを見下ろした。

「んじゃ、モモにとって凪徒は何だ?」

「え? 先輩は……やっぱり『先輩』だと思いますけど、家族の中でしたら『真ん中のお兄さん』です」

「真ん中?」

 『彼氏』や『旦那』という言葉を期待していた暮には大外れな回答だった上、『真ん中』とは何ぞやと首をひねったが、

「大きいお兄さんが鈴原お兄さんで、小さいお兄さんが秀成君。あ、あと鈴原夫人はお姉さんで、リンちゃんは年子の妹です」

「な、なるほどねぇ~……」

 ──それで『真ん中』か……しっかし凪徒の奴、モモが十八の誕生日を迎えてやーっと解禁したってのに、あいつまだ手ぇ出してないのかよ!

 そのまま他の団員達の位置付けを次々に上げ続けるモモの言葉は、もはやそよ風のように聞き流しながら、ふともう一人の気になる存在を、暮は再び問い(ただ)した。


< 235 / 238 >

この作品をシェア

pagetop