*触れられた頬* ―冬―
「な、モモ。もうすぐモスクワから戻って二週間だろ? やっぱり会いたくなってるんじゃないのか? たまには秀成のパソコン借りてさ、大画面で喋ってみたら──」

「大丈夫です、暮さん。それに……あたしには、日本にもお父さんとお母さんがいますから!」

 話途中で元気に返事をしたモモのニコニコ顔に、暮は一瞬ハテナが渦巻いた。

「父さんって高岡社長のことだよな? 母さんって誰だ? 杏奈さん……じゃ、若いよな? 夫人? 茉柚子さん? あぁ、園長先生か?」

「いえ。暮さんですよ」

「なるほど~……って……えっ!? お、おれっ!?」

 すっとんきょうな声を上げて自分を指差した暮の仰天な姿に、モモは笑みを崩さず大きく(うなず)いた。

「だって、ずっと近くで見守ってくれていて、いつも心配してくれて、あたしが困っている時、一緒に泣いてくれたじゃないですか。お母さん以外の何者でもないです!」

「そ、そ、そうかぁ~?」

 そんなに喜んでくれるのならまんざらでもないと思ったが、高岡紳士がいるとは云え、何故に父親でなく母親なのかと、苦笑いしつつ問い掛けた。


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