*触れられた頬* ―冬―
 ──しっかし、おやじが珍しく送ってきたから()く気になってるけど……何だか変な内容だったな。

 凪徒は一旦心を落ち着かせ並んだ案内所にて、今朝方起き抜けに確認したショートメールを再度覗いてみた。

『凪徒、椿さんのことを何処(どこ)でも誰にでもくまなく訊くんだぞ。宿でも、店でも、サーカスでも、だ』

 ──サーカスでも、って何なんだよ? ……ま、訊いてやるけどさ~。

 自分の番が回り、カウンターの受付嬢に問い掛ける。

「モージナ スプラスィーチ(ちょっとお尋ねしますが……)」



「モモっ!!」

 凪徒の大声と駆け寄る激しい足音に、モモは喧噪の中でも即座に振り返った。

「先輩……?」

 目の前に現れた息遣いの荒い凪徒は、真剣な表情に焦燥の色を微妙に浮かべて、突然モモの両肩に手を置いた。

「つ、椿さんが……見つかったかも!!」

「え……!?」

 いきなりの吉報に、初めは理解が出来なかった。それも凪徒の顔が次第に明るくなるにつれて、モモの思考も落ち着きを取り戻す。

「サーカスの券は明日に切り替えてもらった。住所のメモも貰ったから、モモっ、今から行くぞ!」(註1)

「はっ、はいぃっ!!」

 二人はやっと本来の笑顔で見つめ合い、モモは喜びに溢れた元気な返事で凪徒に応えていた──。



[註1]公演日:実際平日公演は週に1~2回らしいので、連日公演は余りないかも知れません。


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