スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
 ホテルでスレンダーな女性と一緒にいるのを見た日から、彼の帰宅が遅くなった。
 これはもう、完全に黒だろう。

 早めに手を打った方がいい。そう思う反面、決定的な証拠を掴んでしまったら二度と悠真と一緒にはいられなくなってしまう。
 そう考えると、何も行動には出られない。

 クリニックでは引き継ぎ作業が続いている。新しいスタッフは、今まで派遣社員で働いていた若い女性だ。

 医療関係で働いたことがないらしく、ゼロからのスタートである。
 そんな彼女は、必死に足掻いて仕事を覚えようとしているのがわかった。
 だからこそ、凪沙の個人的感情には蓋をして、しっかりと引き継ぎをしてあげたいと思う。

 ようやく最終日となり、クリニックでは凪沙のお疲れ様会と、新しいスタッフの歓迎会が行われた。

 短い間とはいえ、明日からもうクリニックに来ることはない。それを実感して、寂しさが込み上げる。

 今は、そうでなくとも凪沙の精神は不安定なため、どんよりと暗く落ち込んでしまいそうになる。
 だが、こんな席で暗く沈んでいる様子を見せる訳にはいかない。

< 38 / 61 >

この作品をシェア

pagetop