マーメイド・セレナーデ
将来。
進路。


漠然と浮かんでいたその不安が現実的になるに連れて、徐々に得体の知れないものになり始めた。

俺は何がしたいんだ。
こんなところでは何も出来ない。

親は簡単に言う。お前の好きにやればいい、って。

好きにって?


それがわからないから余計に苛立つ。
なんでも卒なくこなしてきた俺が、自惚れているわけではないけれど、思考の渦はそこに行き着いてしまう。
どうして俺が、と。


俺が、こんな辺鄙な田舎で終わるなんて。
隣でなにやら楽しそうに話す真知を話半分に聞いて俺は俺の思考に囚われていく。


流れ行く景色はいつまで行っても変わらない田園風景と山ばかり、ここはそういうところだった。
< 278 / 302 >

この作品をシェア

pagetop