マーメイド・セレナーデ
規則に反しないように肩の辺りで軽く結ばれた髪に、一つも隙がない制服姿。
首元まできっちりボタンを留めて、リボンタイも緩められていない。苦しくないのだろうか。

きっちりまとめられた制服から、地味な印象を受けたがもっと緩く着こなせば悪くないんじゃないか。
ボタン一つまで開けていいという今期の生徒会が先生に打ち勝った規則さえも許せないのか。


もったいねぇな。
もっと、……。



「あの、」

「あん?」



思考が中断されて目を合わせた。

俺、今何考えてた?



「あの、お願いがあるんだけど……」

「あ?」



お願い?
……予想と違った台詞にまじまじと先輩の顔を見てしまった。

自惚れ。
別に、そういうつもりではなかったんだけどな。

先輩の表情から、どうにもこうにもそっち方面とはまるっきり違うらしいことに気付いて俺は姿勢を正して、次の言葉を待った。
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