マーメイド・セレナーデ
俺は、あの日と同じように美術室の前の手洗い場に座ってスケッチブックをめくる。
あの日の、先輩の言葉を聞いてから俺の生活はがらりと変わってしまった。
一枚一枚、めくって最後まで来て俺は顔を上げた。
「どお?」
「……いいんじゃねぇの」
緊張した顔つきから一変、俺のその一言で先輩はほっとしたように笑顔を見せた。
「なんつーか、いいなこういうの。木村先輩のデザイン、俺好みだな」
「本当?ありがとう。……じゃあ、明日でも大丈夫?」
「あ?……もう出来てんの?」
「うん、最後の5枚は新作だけどね。それ以外はもう出来てるのなの。だから、あとは柏木くんに合わせるだけなの」
「あと2着は夏休みで作るつもり、2つ選んでくれる?柏木くんが着たいのを作るから」
そこでもう一度最後のほうを、今度は着たいもの、という意志をもって見比べた。
「なぁ、」
ふと、思いついたことを口に出してみようと思った。
なんの脈絡もなくこの話を先輩に話そうと思ったのは、俺がこの話をできる人間が周りにいなかったからかもしれない。
そのときにはなんにも考えはしなかったが。
あの日の、先輩の言葉を聞いてから俺の生活はがらりと変わってしまった。
一枚一枚、めくって最後まで来て俺は顔を上げた。
「どお?」
「……いいんじゃねぇの」
緊張した顔つきから一変、俺のその一言で先輩はほっとしたように笑顔を見せた。
「なんつーか、いいなこういうの。木村先輩のデザイン、俺好みだな」
「本当?ありがとう。……じゃあ、明日でも大丈夫?」
「あ?……もう出来てんの?」
「うん、最後の5枚は新作だけどね。それ以外はもう出来てるのなの。だから、あとは柏木くんに合わせるだけなの」
「あと2着は夏休みで作るつもり、2つ選んでくれる?柏木くんが着たいのを作るから」
そこでもう一度最後のほうを、今度は着たいもの、という意志をもって見比べた。
「なぁ、」
ふと、思いついたことを口に出してみようと思った。
なんの脈絡もなくこの話を先輩に話そうと思ったのは、俺がこの話をできる人間が周りにいなかったからかもしれない。
そのときにはなんにも考えはしなかったが。