マーメイド・セレナーデ
家に帰って、俺は数学のノートを後ろから開いて机に向かった。ラインが引いてあるノートも、今の俺には全く見えていなくて。

ただただ、ノートに向かっていた。


鉛筆を走らすたび、消しゴムで修正を加えるたび。
迷わず進む手に俺は、確実な想いを抱く。


将来って、なんだ。
進路って、なんだ。


幼い頃交わした約束をずっと信じていけるほど俺も子どもじゃない。
ただ、流されるままになるのは嫌だった。


真知がどういう想いでいようと俺は俺のしたいことをしたかった。
よどみなく進む筆に、俺の心は決まっていた。


ただ、親元で過ごしてぼんやりと過ごす時間は終わった。
自分の意思で持って、約束を果たすと決めた。
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