マーメイド・セレナーデ
「翔太、帰ろ?」



いつものように一瞬の緊張が走り、真知は顔を覗かせた。
けれど、俺の一言でその緊張は更に高まることとなった。



あのときの判断は、今でも後悔はしていないけれど。
それでも、もっと違う何かができていたのかもしれないと思うときはあった。



「悪い真知、しばらく一緒に帰れねぇ。先帰っとけ」

「えっ?」



驚きをよそに俺は数学のノートをバッグに突っ込み、真知の立つ扉からその身体に触れないように避けて、教室を飛び出した。

もう夏休みまで1ヵ月もなかった。
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