マーメイド・セレナーデ
向かった先はもう俺にとっては馴染みとなった使われない美術室。
あれやこれやと言葉を重ねて先生から借りた美術室の鍵。埃被っていた教室も俺と先輩の働きで見違えるようになった。

すでに付けられていた油絵の画材で汚れた色とりどりの汚れはいまだに残ったままだったが。



部屋の片隅で着替えるとところどころ俺には合わない部分がある。裾が短かったり、袖が少し足りなかったりと。
肩幅はさほど問題ない。

一体誰用に作られたものなのか少し疑問だ。



「先輩、着替えたけど」



裾と袖が足りない、と伝えようとしたのに俺のノートを見ていた先輩が先に声を上げた。
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