マーメイド・セレナーデ
「真知」

「翔太?」

「帰るぞ」



終了式が終わって、俺は真っ先に真知を呼びにいく。
いつものような日常に戻すために。


目を瞬いて俺を見つめてくる真知を真正面から受け止めることが出来なくて、俺は眼を逸らしたけれど。
何も知らない真知はにっこりと笑って隣に並ぶ。

それが俺の得体の知れないものを助長させていくことには、見知らぬふりをした。



久し振りの帰り道。
どちらも何も言わない。

何を言っていいのか分からない。

言葉のない2人の空気にとまどっているのは俺だけでなく、真知も。


何が距離を広げたのか、わからないほど幼いわけではない。
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