マーメイド・セレナーデ
進路調査について呼び出されたのは言うまでもない。
大学進学を勧める担任を言いくるめて俺は突き通した。

口止めすることも忘れずに。


まだ、受けるわけじゃないから考える時間はまだまだある、と引き下がった担任に内心舌をだして誰が考え直すか、と悪態ついた。





「よぉ」

「…………まさか、来てくれるとは思わなかった」



胸に一本の花を差して先輩はニッコリ笑った。
3年の教室でうるさく騒いでいるというのに、先輩はここに足を運んだ。



「先輩こそ、どうしてきたんです?」



いつものように手洗い場に座って先輩を見た。
先輩は、俺を確認してニッコリと笑う。


徐々に俺に近づくと口角が上がり、リボンタイに手をかけるとするりとその首から引き抜いた。
右手に持ったリボンタイを重力に従い腕を落とすと一緒にその場に落とす。金具が廊下に当たって音を立てた。

先輩は尚も俺に一歩一歩近づいて、次にボタンに手をかけた。
一つ二つと開けられるのを見つめて俺も口角を上げて先輩を見た。
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