御曹司様はあなたをずっと見ていました。

少しして、進一郎さんは皆に向かって、改まった口調で話し始めた。

「突然だが、皆に報告があるんだ…梨沙にもまだ話していないのだが…結婚式を行う場所が見つかったんだ。…会社関係は、また改めてする必要があるが、とりあえず親しい者だけで結婚式をしようと思うんだ。」

私はあまりにも突然の話に驚き声を出した。

「見つかった…とは、どういう意味でしょうか?いきなり結婚式だなんて…何があったのですか?」

「うん、実は梨沙のお婆様が入院している病院で、式を挙げられることになったんだよ。」

進一郎さんの話を聞いて、私を含め皆が一斉に声を出した。

「…病院で結婚式するのか?」

進一郎さんは、少し笑みを浮かべて頷いた。

「息子がデータを盗んだ事件で、院長が何かお詫びをしたいと言ってきたんだ。…その時に思いついたんだ。…ちょうど、あの病院に梨沙のお婆様が入院しているし、あの病院の中なら、体への負担も少なくて済む…それに、病院の最上階には無駄に豪華なホールがあるんだ。そこを貸してくれるそうだよ。…梨沙、どうかな?」

「…進一郎さん、ありがとうございます。おばあちゃんも、きっと喜んでくれると思います。」



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