【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
心に浮かんだ衝動を抱えたままふらふら歩いていると、長い橋に差し掛かった。
橋の欄干から下を見れば、足元よりもずっと遥か遠くで、ごうごうと音をたてて茶色い水が流れている。
昨夜からさっきまでずっと雨が降ったから、水かさが増し川の流れも速い。
ここから飛び降りれば、あの世にいけるのだろうか。
耳朶を打つのは水の音ばかり。
それ以外はなにも聞こえない。
俺はバックをその場に手放すと、のそりと足をあげ躊躇うことなく欄干を越える。
死んだ理由を知ったら、きっと嗤う奴もいるだろう。
あいつ、そんな理由で死んだのかと。
情けないと眉を顰める奴もいるかもしれない。
でも俺にとっては“それ”がすべて。
それが生きる理由、存在する理由だった。
それをなくした今、生きる価値はもうない。
もう俺は、気が滅入ってしまったんだ……。
生ぬるい温風が、伸ばしっぱなしの髪を揺らしていく。
7月の空は厚い雲に覆われ、白と黒を適当に混ぜたような綺麗とは言い難い色をしていた。
せめて最後くらい綺麗な空が見たかった、なんて一瞬柄にもないことを考えて、ふと人知れず嘲笑が漏れる。
お天道様にも嫌われているなんて、いかにも俺らしいじゃないか。