【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
俺は慌てて洋服箪笥の前に駆け寄る。
そこに掛けられた服は決して多いとは言えない。
生まれてこのかた洋服にこだわりを持ったことがないから、ファッションセンスなんてきっと欠片もない。
普段は黒ずくめの適当な恰好ばかり。
けれど今日は小坂の隣に立ってもおかしくない恰好をしなければならない。
どんな恰好をしていけば、小坂にふさわしいのだろう。
今までは放課後にしか会っていなかったから、私服姿で会うのは初めてだ。
なんとなくそわそわとしてしまうのは、どうしてだろう。
そうして迷いに迷った挙句、結局ブラックのカラーシャツにTシャツ、ブラックのパンツと、普段と大して変わらない黒ずくめファッションとなった。
鏡に映ったそんな自分を見ながら、これからはもっと色味を豊富に買い揃えないとなとそっと自戒した。