【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ




空は生憎の曇り模様だった。

けれど気温は高くて、むっと蒸し暑い。


待ち合わせは花火の打ち上げ時間2時間前。

場所は駅前。

花火大会の開催地は、数駅先なのだ。

昨夜調べてみたところ、電車で30分くらいかかる。


花火大会に向かうのであろう浴衣姿の人たちが絶え間なく駅の中に吸い込まれていく。


小坂を待つ俺の内心は、ひどく落ち着かない。

昨日、恥ずかしい姿を晒したからだ。

時間が経てば経つほど羞恥や負の感情が膨らんでいく。

どんな顔をして会えばいいのだろう。

もしかしたら軽蔑されて目も合わせてもらえないかもしれない。


小坂なのだからそんなことあるわけないと思う自分がいる一方で、不安はやはり拭えず、意味もなく何度も腕時計を確認してしまう。


そうしていると、前触れもなく突然視界が暗くなった。


「だーれだ」


続けて背後から聞こえてきた、明るい声。
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