原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
「今日はウェイン家から連絡があったようだな」

「……」

 コルテス侯爵には、まだ兄ダンカンが辺境から
脱走したことは伝わっていないようだった。
 辺境伯は預かったダンカンを、侯爵に知られる
ことなく連れ戻そうとしているのだろう。


「卒業まで成績を落とさないように、と。
 あとは実家の皆の近況を知らせてくれました」

「実家の皆様はお変わりないようか?」

「はい、お陰様で……」

「卒業式には、マーカス伯爵ご夫妻をお招きしましょうね」

「……ありがとうございます」


 オスカーの学業成績に満足している義父母が顔を見合わせて微笑んでいる。
 ふたりに嘘を吐いて誤魔化した事が心苦しい。
 そうだった、次はダンカンから俺に手紙が来る。


『会いたい』
 確かそう書かれていて、俺は祭りの夜ダンカンに会う為にウチを出て、髪を染める魔法をグレンジャーに頼んで……と思い出した。



しかし今もまた何を思い出したのかモヤモヤして来て、頭の中に何も浮かんでこないオスカーだった。
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