原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 オスカーらしくない自信が無さげな物言いなのに。
 ロザリンドは胸がキュンキュンした。
 ファーストデートを申し込まれるときめきを初めて知った。


 婚約者だったウェズリーとは何度もふたりで出掛けたが、それは予め決められた
『婚約者とのお出かけ』であり、『デート』と
認識していなかった。


「喜んで、ご一緒します」


 嬉しすぎて、抱きつきたいのを我慢して。
 令嬢らしく、慎ましやかに返事する。
( がっつくな、ロザリンド!)


「ありがとうロージー。
 昼食は要らないと、義母上には俺から伝えておくから。
 ゆっくりで良いから出かける準備をしておいで。
 祭りは逃げないから、慌てなくてもいいからね」


 祭りは逃げないけれど、貴方が逃げないように。
 ロザリンドはメイドに声をかけて、急いで部屋へ向かった。

『市井の人達から浮くことなく、それでいて可愛くて』
 脳内で手持ちのワードローブを並べてみる。



 想定外のオスカーとのデートイベントだった。
 急に与えられたチャンスだ。
 失敗はしたくない。


 祭りは逃げないけれど……
 貴方が逃げないように。
 
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